2009年5月アーカイブ

あらすじ

小林家は栄一・久美の老夫婦が、息子に会社を譲り、穏やかに暮らす日々。

ある日、1本の無言電話がかかってくる。何回目かの電話で「久美子ちゃんか?」と一言問いかける声がする。それは久美の遠い記憶を呼び覚ます重い一言だった。

久美は、旧姓は麻生久美子。終戦を満州(今の北朝鮮の慶興)で迎える。当時の誰もがそうであったように久美子もまた、この世の生き地獄を見ながらも、かろうじて日本に帰ることができた。久美子は結婚を約束した真吾を待った。真吾もまたシベリアで久美子を思って生きながらえていた。1年が過ぎ、2年3年・・・。7年が過ぎ、久美子は栄一と結婚する。久美と名前を変えて・・・。

真吾は一人娘を嫁がせ、妻を看取り、一人暮らし。軽い脳梗塞を患い、死を考えた時、最後にもう一度会いたいと思ったのは、久美子だけだった。やっとの思いで電話をかけるが・・・。

戦争の事実を受け止めながらも、新しく生きようとした二人には長い影があった。70歳80歳になっても淡い恋心に揺れる二人。たそがれ期の恋はほろ苦く、そして微妙に・・・可笑しい。

日常の中に生きていた戦争・・・。ささやかな小市民の日常を、優しく、切なく、そして可笑しく描き出す山田太一の世界、夏組が今年、あなたに贈ります。

 

作:山田太一   演出:井村奈緒美

 

キャスト

小林久美:佐次靖子

  栄一(夫):佐次和弘

  真理(孫):原涼子

麻生久美子:鈴木享子

坂崎真吾(青年期):山口昌信

坂崎真吾:鈴木均

高木彩(真吾の娘):山口みどり

飯沢鏡子:鈴木道子

沢本芳樹:荻野浩樹

松本光夫:渡邊強

この戯曲との出会いは、新宿紀伊国屋書店。一気に読みきり、是非上演させていただきたいと思ったのですが、まずは劇団員で作品検討会をし、今年はこれでいきたいと決定しました。問題は上演許可が下りるかどうか・・・。自分の劇団での上演を絶対許可しない劇作家もいますし、上演料が高くてとても・・・という場合もあります。まずは出版社から山田太一氏に連絡を取ってもらいました。なんせ天下の山田太一先生です。あの、「岸辺のアルバム」「異人たちの夏」「ありふれた奇跡」の山田太一先生です。期待と不安でどきどきでした。ついに待望の返事が・・・。編集者M氏

M氏「上演を許可して下さるそうです。」

S「ありがとうございます。それで上演料は・・・?(はたして支払える範囲か・・・どきどき)」

M氏「結構だそうです」

S「は?」

M氏「記念にチラシの1枚も送って下さればいいということで・・・」

S「あの・・・タダってことですか!?」 と思わず単刀直入に下品な言葉で確認せずにはいられなかった。こんな太っ腹な大作家はそうそういない。驚嘆と感謝の気持ちでいっぱいである。この感謝の気持ちはいい舞台を作り、「やっぱり山田太一のホンはいいね」というファンを一人でも多く獲得することでしかお返し出来ない。劇団員一同、頑張ります!

その後手紙で正式な上演許可証をいただき、今日、晴れて報告できた次第である。

 

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